ネット営業の遠山行政書士事務所

岐阜県中津川市蛭川2244-2

電気通信事業法の消費者保護ルール(初期契約解除制度と書面交付義務)

契約トラブルを無くして顧客満足度の向上を

 

2014年3月の国民生活センター公表によれば、光回線やプロバイダー契約等の「インターネット接続回線」、「固定電話サービス」、「携帯電話・スマートフォン」、「モバイルデータ通信」という電気通信サービスに関する相談件数が増加傾向であり、2009年度の相談件数は35,843件、2010年度は37,305件、2011年度は41,265件、2012年度は48,668件、2013年度は39,973件(前年同期は37,770件)に上っています。

その相談件数の多くが訪問販売や電話勧誘によるトラブルであり、主な相談事例として、以下の5例が挙げられています。

【事例1】夜遅く電話で勧誘され回線契約を申し込んだが、説明のなかったプロバイダーも契約したことになっていた。
【事例2】今後は今の固定電話は使えなくなると言われて光回線を契約してしまった。
【事例3】勧誘電話をかけてきた事業者に遠隔操作でプロバイダーの設定をしてもらったが、頼んでいないオプションサービスも契約したことになっていた。
【事例4】訪問してきた事業者に光回線契約を申し込んだら、知らない間に映像配信サービスも契約したことになっていた。
【事例5】勧誘が繰り返されて迷惑だ。

 

これらの電気通信サービスは特定商取引法の適用除外のため、訪問販売や電話勧誘販売であったとしても、従来は同法に基づくクーリングオフはできませんでした。

しかし、上記のような苦情が多かったため、電気通信事業法・同省令の改正(平成27年5月22日交付、施行日は公布の日より1年以内)が行われ、インターネット固定回線やインターネット接続サービスは販売方法に限定なく初期契約解除(クーリングオフに類似の制度)が適用されるようになります。(スマートフォン等の移動通信契約については一定の条件付で初期契約解除制度の適用は除外されますが、説明義務と書面交付義務は適用されます。)

 

その「電気通信事業法等の一部を改正する法律」(以下、同法といいます)にて、固定電気通信サービスについて定められた事項は以下のとおりです。

Ⅰ.サービス提供条件の説明義務(同法第26条)(省令第22条の2の3)
Ⅱ.書面の交付義務(同法第26条の2)(省令第22条の2の4)
Ⅲ.初期契約解除(クーリングオフ制度)(同法第26条の3)
Ⅳ.禁止行為(不実告知と再勧誘行為)(同法第27条の2)
Ⅴ.販売代理店に対する指導措置(同法第27条の3)

 

電気通信サービスには、「インターネット接続回線」、「固定電話サービス」、「携帯電話・スマートフォン」、「モバイルデータ通信」といった種類があるため、同法による規制も以下のような分類になっています。

固定通信サービス
初期契約解除の適用対象。 説明義務と書面交付義務も適用される。
(1)光ファイバー回線(FTTH)
(2)CATVインターネットサービス
(3)FTTHとCATV向けのインターネット接続サービス
(4)DSL向けのインターネット接続サービス

移動通信サービス
「確認措置」認定を受けたサービスは初期契約解除の適用除外。よって、ほとんどの携帯電話サービスは初期契約解除適用にはならない。ただし、説明義務、書面交付義務は適用される。
(1)携帯電話、携帯電話インターネット接続サービス
(2)携帯ネットワークを用いる(1)以外のインターネットサービス
(3)BWAサービス
(4)BWA向けのインターネット接続サービス

その他の電気通信サービス
以下のサービスは説明義務、書面交付義務は適用されるが初期契約解除は適用対象外。
(1)電話およびISDN
(2)DSLサービス
(3)PHSおよびPHSインターネット接続サービス
(4)公衆無線LANサービス
(5)FWAサービス
(6)IP電話
(7)プリベイド(前払い方式)の携帯電話
(8)MNOでない者が提供する携帯ネットワークを用いるMVNO
(9)その他のインターネット接続サービス

このように光ファイバー回線やプロバイダ契約など(固定電気通信サービス)は初期契約解除制度(以下、便宜上クーリングオフと表記します)が導入されましたが、店舗販売が主流である携帯電話(移動電気通信サービス)は条件付でクーリングオフが除外されました。
しかし、提供条件説明や書面交付の義務は、ほぼ全ての電気通信サービスに課せられます。

クーリングオフ期間は、書面交付日かサービス開始日のどちらか遅い方の日から8日間です。ただし、特定商取引法のクーリングオフ制度とは異なり、クーリングオフをするまでに消費者が利用をした通信利用料と省令で定められた金額(工事代等)については消費者が負担することになります。事業者がクーリングオフ妨害をした場合にはクーリングオフ期間が延長されるのは、特定商取引法と同様です。

提供条件説明や書面交付の義務については、以下のとおりです。

提供条件の説明義務(省令第22条の2の3第1項)

以下の事項は「基本説明事項」として利用者に必ず説明することが義務化されています。
(1)電気通信サービス事業者の氏名または名称
(2)販売代理店の氏名または名称
(3)電気通信サービス事業者の電話番号、メールアドレス、その他の連絡先。
(電話番号は苦情・問合せに対応する時間帯も表示しなくてはならない。)
(4)販売代理店の電話番号、メールアドレス、その他の連絡先。
(電話番号は苦情・問合せに対応する時間帯も表示しなくてはならない。)
(5)以下のサービス内容
イ)名称
ロ)次のうち販売するサービスの「種類」を選択して表示
・電話およびISDN
・携帯電話およびPHS
・携帯電話・PHS
・携帯電話・PHSのアクセスサービス
・DSLのアクセスサービス
・FTTHのアクセスサービス
・CATVのアクセスサービス
・BWAのアクセスサービス
・公衆無線LANのアクセスサービス
・FWAのアクセスサービス
・IP電話サービス
・仮想移動体電気通信サービス
・インターネット接続サービス(プロバイダ)
・以上に挙げたもの以外のインターネット接続サービス
ハ)品質(通信速度など)
ニ)提供を受けることができる場所
ホ)緊急通報に係る制限がある場合には、その内容
ヘ)有害情報フィルタリングサービスの制限がある場合は、その内容
ト)ホとヘ以外に利用制限がある場合は、その内容
(6)料金
(7)通常料金以外に消費者が負担する経費
(8)期間限定で値引きキャンペーンをする場合は、その期間と条件
(9)契約の変更や解除をする場合の連絡先と方法
(10)契約の変更や解除について以下の定めがある場合は、その内容
(クーリングオフや契約の自動更新など)
イ)契約の変更や解除をすることができる期間の制限
ロ)契約の変更や解除に伴う違約金
ハ)契約の変更や解除があった場合に機器の返還に要する費用を利用者が負担する必要があるときは、その内容。
(11)初期契約解除(クーリングオフ)に関する事項
(12)携帯電話の販売については「確認措置」に関する事項
(携帯電話の販売をしない場合は、この事項の掲載は不要)

 

また、基本説明事項などのサービス提供条件の説明は、「利用者の知識、経験、契約の締結の目的に照らして、利用者に理解されるために必要な方法・程度で行う旨(適合性の原則)」を説明することも義務化されています。

 

契約書面の交付義務(省令第22条の2の4)

電気通信サービスでは、利用者保護のために以下の事項を網羅した契約書面を交付することが義務化されます。
(1)基本説明事項(省令第22条の2の3第1項・・・説明義務と同じ事項)
※本解説書の6ページ~7ページで記載している基本説明事項の全部を記載しなくてはなりません。
(2)契約成立の年月日。利用者の氏名、住所など。
(3)料金の支払い時期と方法。
(4)サービスの提供開始予定日。
(5)有償のオプション契約をする場合は、次の内容。
イ)オプション契約の名称。
ロ)オプション契約の料金と経費。
ハ)オプション契約について期間限定で値引きキャンペーンをする場合は、その期間と条件。
ニ)オプション契約の変更や解除に条件がある場合は、その内容。
ホ)オプション契約の変更や解除をする場合の連絡先と方法。
(6)契約書面の内容をよく読むべき旨。

 

この書面については、利用者の承諾を得たうえで以下の方法によって電子的に交付することも可能とされています。
(1)印刷可能なファイル形式(PDF等)にてメール添付で送信する。
(2)インターネットのホームページに交付書面の内容を掲示し、利用者がその掲載ページにアクセスしたことを事業者が記録できる方法で、かつ利用者が交付書面のファイルをダウンロードできる形式にする。
(3)インターネットのホームページに交付書面を掲示し、契約成立後に交付書面を紙媒体で手渡しもしくは郵送する。(手渡しや郵送をしない場合は交付書面を3ヶ月間掲示すること。その期間内は書面の内容は改変してはならない。)
(4)交付書面をCD-ROM等のメディアに記録して交付する。

 

初期契約解除制度(法第26条の3)

クーリングオフの対象となる固定電気通信サービス
(1)光ファイバー回線(FTTH)
(2)CATVインターネットサービス
(3)FTTHとCATV向けのインターネット接続サービス(プロバイダ契約)
(4)DSL向けのインターネット接続サービス(プロバイダ契約)

 

クーリングオフの起算日とクーリングオフ期間
「法26条の2に基づく書面(契約書面)を交付した日」もしくは「通信サービスの利用開始日」のどちらか遅い方の日より8日間。

 

クーリングオフ妨害
事業者がクーリングオフは出来ないという不実を告げたり、クーリングオフを妨害する行為をしたときは、クーリングオフ期間が延長されます。
このようなクーリングオフ妨害行為があったときは、事業者はその事実を認めてクーリングオフが可能であることを記載した書面(不実告知後書面)を交付しなくてはならず、利用者はその書面を受領した日から8日間はクーリングオフをすることが可能となります。

クーリングオフの方法と発効
利用者側から書面でクーリングオフの趣旨を通知した日にクーリングオフの効果が発効されます。このクーリングオフ通知の書面には特に様式が定められておらず、どのような形式の書面であっても事業者は受付をしなくてはなりません。

利用料金の扱い
クーリングオフまでに利用者が使用した分の利用料金は消費者に請求することができます。この点は特定商取引法のクーリングオフ制度との相違点です。
ただし、その利用料以外には違約金や損害賠償金など名称の如何を問わず一切の金銭を利用者に請求することはできません。(これに反する違約金等の定めを契約書や規約に記載することも許されません。)

 

禁止行為(不実告知と再勧誘行為)(法第27条の2)

電気通信サービス事業者と代理店は、利用者に対して不実告知や勧誘拒否後の再勧誘行為をすることを禁じられています。

<不実告知>
利用者に対し、電気通信サービスの契約に関する事項であって、利用者の判断に影響を及ぼすことになる重要なものについて、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為をすることは禁止とされています。

<再勧誘>
勧誘を受けた消費者が契約をするつもりが無いと意思表示をしたにもかかわらず、事業者が勧誘を継続する行為は禁止とされています。明確な意思表示では無くても、消費者が「(勧誘を)もう止めてほしい」といった意思を表示した場合は以後の勧誘は禁止となります。

 

以上のように電気通信サービスの契約には、説明義務、書面交付義務、クーリングオフ対応が規定されました。

特に光ファイバー回線やプロバイダの契約では、店頭販売や通信販売であってもこれらの規定が適用されます。

これらに該当するサービスの提供や販売をする事業者の方は、法改正事項を反映した提供条件説明(書面)や契約書面を用意する必要があります。
その法定書面の雛形については、当職が作成したものを下記のリンク先ページにて販売しております。

 

光ファイバー回線とインターネット接続サービスの契約書面|遠山行政書士事務所の雛形販売

 

法改正に対応する契約書面の整備については、上記のリンク先をご参照下さい。

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