口コミや「いいね!」の「やらせ」をするステマと不当表示

投稿者: tohyama | Category: 消費者問題 | コメントをどうぞ

2012年1月に人気口コミサイトの「食べログ」で、業者が飲食店側から報酬を受け取る代わりに好意的な書き込み(やらせ記事の投稿)をして順位を上げていたとされることが問題視され、消費者庁が調査をしたことが話題になりました。

 

また、2013年1月には、芸能人が自身のブログにペニーオークションサイトでの嘘の落札情報を書き込んで業者から報酬を得ていた実態が明らかになり、大きなバッシングが起きました。

 

このような販売業者が第三者に高い評価を受けていると偽装し、宣伝であると気づかれないように隠れて宣伝をする手法については、ステルス・マーケティングと呼ばれています。

ネットユーザーはこうした行為について、侮蔑を込めてステマと呼んでいます。

 

いわゆるステマは、以上のような口コミサイトやブログへの「書き込みの代行」だけにはとどまらず、ネットのあらゆる所で見かけるようになっています。

 

例えば、フェイスブックの「いいね!」やツイッターのフォロワーを有料で販売する(非公式な)サービスが実在します。ユーチューブの視聴回数を有料で増やす非公式サービスもあります。

こうしたソーシャルメディアで評価の指標となるものをカネで買って、自社で販売する商材の客観的評価性を高める手法は珍しいものではなくなっています。

「カネで買って」というと露骨ですが、「広告費を投じて」に言い換えると少しは高尚に聞こえるでしょうか(笑)

 

また、検索エンジンにおいて、狙ったキーワードで自社サイトを上位表示させるためにSEOという手法が広く認知されています。

検索エンジンのロジックでは、多くのサイトよりリンクを受けるサイトが価値の高いサイトとされるため、そこを逆手にとって特定のサイトにリンクをする有料サービスも数多く存在しています。この有料リンク供給サービスはインターネットが普及した初期より存在しています。

 

最近では、フェイスブックで感動系のエピソード(架空のお話)をシェアし、そこに「いいね!」を集めて、後日にそのページを情報商材の販売ページとして活用する手法に非難が集中しています。

 

こうしたステマの手法に人々が嫌悪感を抱くのは、「やらせ」や「自作自演」という過剰な自己主張を日本人が嫌うという性質をもつこともありますが、やはり販売される商材の性能が適正に表示されていない(=騙されている)という点に問題があるからでしょう。

 

インターネットは情報の収集や発信、人々との交流などを行うには優れた道具であり、僕自身もその恩恵を享受しています。

しかし、そこに流通する情報や共感の指標には、一定の誇張やウソが紛れているということを知っておかねばなりません。

つまり、ソーシャルメディアの情報を手放しで受け入れるのはリスクがあるということです。

 

ネットに溢れる誇張やウソを見抜くには、確かな社会常識やネットの特性についての知識が必要です。

特に社会経験の浅い青年層には、時にはネットを離れてプロの編集者の目を通った書籍を読む時間も確保して欲しいと思います。読書で積み上げた知識とリアルな人付き合いから学んだ経験をベースにして、ネットの情報の真偽を判断する目を養えば、ネットは更に使い勝手の良い道具になってくれることでしょう。

 

話が脱線しましたが、「誰かがカネのために、自分で使用したことも無い商品を他人に勧めるステマの宣伝文を書く行為(または大量のいいね!を供給する行為)」は法律的にはどうなのかという話に戻します。

 

商品の広告をする際に、ウソの情報を書き込んで表示することは景品表示法で禁止されています。

 

同法の第4条第1項第1号では、事業者が消費者に対し、販売する商品やサービスについて以下のような表示をすることを禁止しています(優良誤認表示の禁止)

 

(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの

(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

 

販売業者が自身で「実際のものよりも著しく優良」と誤認させるような宣伝をすれば、これは同法に違反する不当表示として行政規制の対象になります。

実際に、平成23年度の東京都生活文化局の公表資料によれば、582件(431社)のネット事業者が不当表示についての行政指導を受けています。

 

それでは、販売事業者の依頼を受けた第三者(消費者)が口コミサイトやブログに誇張(虚飾)された商品記事を書く行為についてはどうでしょうか?

 

消費者庁は平成24年5月9日に「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を改定し、口コミサイトの問題について次のような解釈を示しています。

 

「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該口コミ情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認させるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。」

 

この消費者庁の見解によれば、「販売事業者に依頼を受けた消費者がブログ等に誇張された商品記事を書く」という行為は景品表示法上の不当表示になりうるということになります。

 

つまり、販売事業者は第三者に評価してもらうように装い、第三者のブログ等に誇張された商品記事を書かせることはアウトです。

(ただし、誇張された表現は無く、適正な記事であれば第三者のブログ等に記事掲載を依頼するのはセーフです。)

 

この消費者庁の文書には、口コミサイト以外にもアフィリエイトやフラッシュマーケティングなどについても解釈の指針が示されています。

しかし、フェイスブック等のソーシャルメディアで「いいね!」等の「共感指標」の回数を水増しする行為については、まだ検討は進んでいないようです。

これはフェイスブックの運営主体が対応するべき問題かもしれませんが、類似の行為は今後も多く出現することが想定されるので、スパムメールと同様の扱いで過度な「共感指標の水増し」にも一定の規制は必要になるかもしれません。

 

そうした行政規制を過度に進めるのは産業発展を阻害することにつながるので、出来るだけ運営企業の自浄努力と業界団体での適正化の取り組みを進めてもらいたいところです。

 

また、事業者への規制だけではなく、情報を閲覧する側の消費者の情報リテラシーの向上も必要です。

消費者教育推進法でも、消費者教育の推進は国や地方公共団体の責務とされているので、ソーシャルメディアとの適正な関わり方や溢れる不当表示の問題について学ぶ場を設けてほしいものです。

 

僕自身も自治体や学校での消費者問題の講演に携わる機会は多いので、今回の記事の内容をわかりやすくまとめ、具体的事例を用いてお話をしていきたいと思っています。

 

 

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