ダイレクトメールが訪問販売や訪問購入に該当するケース(アポイントメントセールス)
特定商取引法では7つの取引形態(訪問販売・通信販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務誘引販売取引・訪問購入)について事業者規制や解約等の民事ルールが定められています。
ビジネスモデルによっては、この複数の取引規制にかかるものもあります。
例えば、消費者に対して(1)郵便でダイレクトメールを送ってアンケートを行い、(2)その回答者に電話をして商品説明をして、(3)その後に消費者宅を訪問して営業活動を行うケースがあったとします。
この場合は、(1)通信販売、(2)電話勧誘販売、(3)訪問販売の3つの取引の要素があり、事業者はこの3つの取引規制を受けることになります。
この3つの取引の解約ルールの概略を以下にとり上げてみます。
(1)通信販売
・クーリングオフ制度は無し。
・法定返品権があり8日間の返品期間がある。
(特約を定めて返品を無効と定めることもできる。)
・返品送料は消費者負担
(2)電話勧誘販売
・8日間のクーリングオフ制度がある。
・返品送料は事業者負担。
(3)訪問販売
・8日間のクーリングオフ制度がある。
・返品送料は事業者負担。
・1年間の過量販売解除権がある。
(通常必要とされる量を超えて著しく超えて販売した場合)
このように取引の類型によって、解約に関するルールも微妙に異なります。これらの複数の取引類型にあてはまる場合は全てのルールの適用が可能となり、消費者は自身が有利になるルールを選択して活用できることになります。
また、事業者は複数の取引規制の中で最も厳しい基準に合わせて事業運営をしていく必要があります。
ダイレクトメールやインターネットの通販サイトの広告を見て、消費者から電話をかけて商品を注文するケースでは、通信販売にあてはまるため特定商取引法の通信販売ルールが適用されることになります。
しかし、ダイレクトメールやサイトの広告のあり方や消費者とのやりとりの態様によっては、これが訪問販売にあてはまると判断されることがあります。
例えば、特定商取引法の通達では以下のような事例についてはアポイントセールスに該当し、訪問販売ルールを適用するとしています。
・パーティーや食事会等への招待のように告げながら、パンフレット等に消費者の目に留まらないような小さな文字で「新作商品をお勧めする即売会があります」と記載するケース。
・「あなたは特に選ばれたので非常に安く買える」等のセールストークを用いる場合はその真偽にかかわらず(訪問販売として扱う)。
つまり、初期は通信販売や電話勧誘販売の形で接触があったとしても、その後に上記内容のような広告の記載やセールストークがあった場合は、解約ルールについては訪問販売の規定が適用されるということです。
(訪問販売ルールは事業者にとって最も厳しい解約基準となります。)
そこで、平成25年2月21日より特定商取引法で規制対象に追加された訪問購入(出張買取)についても、ダイレクトメールや電話勧誘のあり方が問題となってきます。
特定商取引法第58条の6では、「勧誘の要請をしていない者に対し」「営業所等以外の場所において」「勧誘」をしてはならないと定めています。
つまり、飛び込み営業(いわゆるアポ無し営業)による訪問購入(出張買取)は原則として禁止されました。
しかし、「営業所等以外の場所」での勧誘は禁止されましたが、「営業所等」での勧誘は認められています。
よって、営業所から発するダイレクトメールや電話勧誘による訪問購入の営業活動は認められます。(これは特定商取引法の通達にも明示されています。)
訪問購入の事業を行うには、ダイレクトメールか電話勧誘を前置して、消費者の承諾を得た上で訪問を行うことが必要なったということです。
そして、消費者宅を訪問して買取を行うには、特定商取引法の基準を満たした法定書面を交付する義務もあります。
買取の事業でも、消費者が主体的に店舗を訪問して、物品を店舗に持ち込んで取引を行う場合には、事業者側から見れば「訪問」にはあてはまらず、こうした取引は特定商取引法の適用除外になります。
ただし、前述のアポイントセールスの事例のように、事業者が発したダイレクトメールや電話によって消費者を店舗に呼び寄せた場合には、最終的には店舗での取引になったとしても「訪問購入」にあてはまる可能性があります。
その場合に法定書面を交付せずに取引をした場合は、特定商取引法の法定書面の不交付と判断され、取引から相当の期間を経過してもクーリングオフが行われる可能性もあります。
クーリングオフ期間が経過した以後に契約解除が行われ、転売した物品の原状回復を行うのは買取事業者にとってかなり過酷なリスクといえます。
このように特定商取引法の規制対象となる事業を行う場合には、もっとも厳しい基準に合わせて法定書面を整備しておく方が、結果的には事業者利益にもかなうといえるでしょう。
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