特定商取引法の隙間事案と海外サイトとの消費者契約トラブル

投稿者: tohyama | Category: 法律と契約 | コメントをどうぞ

消費者の契約トラブルは、法規制が及ばない隙間で新しい問題が発生しています。

 

例えば、特定商取引法では訪問販売の商品や役務の売買契約は、原則として全てクーリングオフ対象にしていますが、権利売買に関しては指定された権利のみにクーリングオフを認めています。

そのため、温室ガス排出権や温泉付き特養の入居権など、実態の不明な新しい権利売買を行う業者が出現し、クーリングオフを回避するトラブルが生じています。

 

その他にも、貴金属を安く買い叩く訪問買取についても、特定商取引法が「訪問による買取」を規制対象にしていないため、これもクーリングオフによる解決はできません。

(この訪問買取については、特定商取引法の規制対象に加えるための改正議論が進められています。)

 

このように現実に生じる消費者トラブルが先行し、それを是正するための法改正が後追いで行われることが続いています。

あまりに規制強化をし過ぎると経済的停滞を招いてしまうので、対策が後追いになるのは仕方がない部分があります。

問題が発生してから、その対策のための規制や法改正が実現するまでの期間を短縮することが大事と言えるでしょう。
(実際に消費者問題に関しての法改正のスピードは上がっています。)

 

インターネット通販サイトについては、比較的新しい商取引の形態といえますが、クーリングオフは認められていないものの、法改正によって消費者の返品する権利が付け加えられるなどの対策が講じられています。

 

インターネット通販は地域性を越えた取引のため、取引相手の拡大(選択の自由の拡大)というメリットはありつつも、その相手の信頼性の確証を得にくいというデメリットがあります。

つまり、インターネット通販業者との間でトラブルが発生したときには、距離的に遠隔地であることが多いため、交渉に要する消費者の負担が大きくなってしまうということです。

 

それでも、その業者が国内の事業者であれば、国内法で解決を図ることが可能であり、消費生活センターなどの相談機関を活用することもできます。

 

しかし、インターネットはグローバルなツールですから、取引相手の業者が海外であることも珍しくはありません。

消費者は日本語で表記されたサイトであれば、日本人が運営している国内のサイトと誤認することも多く、そこから意思疎通が難しくなることもあります。

 

こうした海外サイトとの取引で個人輸入を行う消費者も増えており、そうした取引で問題が生じると言葉が通じなかったり、法解釈の認識が異なったりして、解決が困難になってしまいます。

 

こうした海外サイトとの消費契約トラブルの対策のために、2011年11月に消費者庁は越境消費者センター(CCJ)を設立しました。

 

このCCJは立ち上がったばかりで相談体制が確立できないため、相談受付はメールとFAXのみという限定的な対応にもかかわらず、4ヶ月間で581件の相談が寄せられています。

 

事業者と消費者間の消費者契約については、法の適用に関する通則法の第11条(消費者契約の特例)により、海外事業者との取引であっても日本国内の消費者法の適用が優先されると定められています。

 

しかし、海外事業者との交渉では言葉が通じなければ意思疎通ができず、日本国内の消費者法の適用を主張しても相手側国で強制する実効的な手立てはありません。

 

CCJは海外の消費者団体との交渉の取次ぎはしますが、海外事業者がその交渉を拒めば強制は出来ないという問題があります。

 

今後も消費者の海外取引は増加していくことが予想されますが、紛争処理のシステムが未整備である現状では、トラブルも増加していくもの思われます。

 

そんな海外取引を行う際には、消費者にも自己防衛の姿勢が求められます。

CCJでは、下記の5つの注意事項を公表しているので、これを参考にして頂きたいと思います。

 

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1.運営者の確認

運営会社の規模やサイトの運営期間など安心できる取引相手かを確認してください。不安な場合は運営会社にメール等で直接確認していただくことをお勧めします。

またサイトに表記されている言語を読めない方は利用をお勧めしません。

2.商品についての確認

日本や一般に流通している価格よりも大幅に安く売っている場合など、偽物やコピー商品かどうかなど、慎重にご判断下さい。

本物の写真や仕様(製造国や材質などスペック)と異なる点ないかなど確認する他、直接運営会社や販売主に確認いただくとより安心です。

3.支払方法の確認

海外サイトではクレジットカードの支払いが非常に多いのですが、カード情報の取り扱いに関して安全かどうかの確認いただくことをお勧めします。

特にカード番号を含む情報を運営会社自体が保持しているかなど、万が一カード番号が漏えいした際のリスクをあらかじめ確認してください。

4.配送方法と配送までにかかる期間

どんな配送方法(船便、航空便)なのか、期間はどれくらいなのか、関税がどの程度かかるのかなど、あらかじめ知っておくことで無用なトラブルを回避することができます。

5.キャンセル・返品条件の確認

海外サイトでは、返品やキャンセルに関する規定がわかりやすく書かれていない場合があります。

返品ができるかどうか不安な場合は、あらかじめメール等で確認することをお勧めします。

 

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グローバルな取引もインターネットの魅力ですが、海外サイトとの取引にはリスクが大きいことも認識して、CCJが注意喚起する上記の点を確認した上でサイトを利用するようにしたいものです。

 

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