消費者安全法の改正(消費者事故の調査機関設置と財産被害の行政措置)

投稿者: tohyama | Category: 法律と契約 | コメントをどうぞ

平成24年の第180回国会では、消費者教育推進法の制定の他にも、特定商取引法の改正と消費者安全法の改正など、いずれも消費者問題に対応する法案が可決されました。

 

消費者教育推進法の制定特定商取引法の改正(訪問購入規制の追加)については、リンク先のページにて解説をしています。

 

今回の消費者安全法の改正については、「消費者事故等の調査機関の設置」と「消費者の財産被害に係る隙間事案への行政措置の導入」が新設されました。

 

消費者事故等の調査機関の設置

 

2000年代には、ガス瞬間湯沸し器事故やエレベーター事故など、消費者の生命や身体にとって高い危険性を有する事故が相次いだという背景があり、消費者事故等についての独立した調査機関が必要であると考えられてきました。

 

そこで、内閣総理大臣が任命する消費者安全調査委員会を設置し、生命身体分野の消費者事故等(運輸安全委員会の調査対象事故は除く)については事故原因の調査を行う権限を付与しました。

これにより消費者安全調査委員会には、事故調査のために立ち入り検査や物件保全、現場立ち入りの禁止などの権限を行使することが認められました。

また、他の行政機関による調査結果に対して同委員会が評価や意見をすることも認められています。

 

事故の発生や拡大防止のために、同委員会は内閣総理大臣に対する勧告・意見具申を行う

こともできます。

また、同委員会は関係行政機関の長に対する意見具申を行うこともできます。

 

 

消費者の財産被害に係る隙間事案への行政措置の導入

 

特定商取引法などの規制法の適用除外を狙った、金採掘権などの実態の無い権利販売やイラクディナールなどの外国通貨取引を行う悪質業者による消費者被害が相次いだため、法規制の隙間事案に対する措置が求められていました。

 

そこで、消費者の財産上の利益を侵害する不当な取引であって、重要事項の不実告知などが行われることにより、多数の消費者の財産に被害が生じる状態を、多数消費者財産被害事態として、該当事業者に対して行政措置を認めるものとしました。

 

内閣総理大臣は、被害を生じさせている取引を取りやめさせる勧告を行うことができるものとし、勧告に従わない事業者には命令をすることを認めました。(命令違反には罰則。)

 

また、内閣総理大臣は被害の発生・拡大の防止に役立つ情報を関係機関に提供するものとしました。

 

特定商取引法などの規制法の適用除外を狙った隙間分野での消費者被害は多く、こうした法規制の及ばない分野に行政が介入できるようにしたことは一定の成果があがることでしょう。

 

しかし、被害金の原状回復が図られなければ、消費者被害の救済はできません。悪質業者が詐取金を隠匿する状況を許さないようにすることが、悪質な事業を根絶することにつながるものと思います。

そのためには、法制度や警察の捜査体制などの多様な問題がありますが、取り組むべき課題かと思います。

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