優良誤認の不当表示でイー・アクセスに措置命令

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消費者庁は、平成24年11月16日にイー・アクセス社に対して、優良誤認の不当表示があったとして、景品表示法に基づいて措置命令を行ったことを公表しました。

消費者庁のニュースリリース(イーアクセス社への措置命令)

その対象となった広告は次のようなものです。(消費者庁の公表資料より引用)

不当表示とされた部分については、以下のように発表されています。
(消費者庁ニュースリリースより引用

——–

平成24年6月末日時点において、75Mbps対応基地局は極めて限られており、特に東名阪主要都市においては、東京都港区台場及びその周辺地域に7局が開設されているのみであった。
そのため前記地方公共団体における全ての事務所において75Mbps対応基地局に係るデータ通信が可能なものはなかった。
(引用終わり)

——–

イーアクセス社としては、「人口カバー率99%」という表示と「最大75Mbps」という表示は位置的に離しており、全てのユーザーに75Mbpsの速度を保証しているわけではないという認識だったのかもしれません。

しかし、消費者庁は、このような表示を行えば「99%のユーザーに75Mbpsを保証する」と誤認させる可能性が高いと判断したということでしょう。

自社の優位性をアピールする広告表現と、不当表示に関する規制のせめぎ合いは、マーケティングとコンプライアンスの両立という永遠のテーマといえそうです。

 

 

日本福祉大学で消費者問題の講演


2012年10月23日(火)に、契約学習ネットワーク主催で毎年恒例となった日本福祉大学経済学部での講演を行いました。

 

経済学部の1年生を対象に、消費者問題について90分間のお話をしました。

最近はインターネットやスマートフォンを利用するサービスでトラブルが多く発生しており、ソーシャルゲームやワンクリック詐欺などの頻発している問題について注意喚起をしました。

 

法律や契約について、身近な問題として意識してもらうために、スポーツのルールやお金の貸し借りを例にして解説しました。

 

恒例となったクーリングオフ・クイズや寸劇(デート商法)も交えて、楽しみながら役に立つ講演をすることができたと思います。

 

講演の感想文も、消費者保護の法律とその適用外を狙った悪質商法の実態について考えさせられたという内容が多く、問題意識を持って頂く事はできたようです。

 

これを機会に、消費者問題や契約・法律の関心を高めてもらえば本望です。

 

恵那市のケアマネージャー会議にて遺言・相続について講演


平成24年9月19日に消費生活相談員の業務で、恵那市のケアマネージャー会議にて遺言・相続についての講演を行いました。

遺言や相続は基本的には個人間の問題であるため、事業者と個人間の問題を対象とする消費生活相談業務からは除外されるのですが、多重債務者の相続放棄などは消費生活相談の対象になることもあります。

相続の基礎知識について学ぶことは、ケアマネージャーさんの職務にも有益なので、消費者問題も交えながらお話させて頂きました。

写真は講演開始前の様子です。
最終的には座席は満員となりました。

ケアマネージャーさんは高齢者の方々と接点が多く、実際の相談を想定して相続や遺言の手続に関する話を聴いて頂いたと思います。
皆さん、とても熱心に聴講されていました。

講演ではテキストを配布し、その内容に沿ってスライドで資料提示しながら解説しました。
途中でクイズを交えつつ、遺言や相続の手続を理解頂く流れとしました。

概要は以下の通りです。

  相続を巡る問題

  気になる相続税・贈与税

  マイナスの財産の相続放棄や限定承認

  相続の権利者(法定相続)

  遺言でも奪えない相続人の権利(遺留分)

  法的に無効な遺言・相続への対抗手段(遺留分減殺請求)

  相続の協議がまとまらない場合(調停・審判)

  遺言書か遺産分割協議書(本人が指定するか遺族で協議するか)

  遺産分割協議のコツ

  遺産分割協議書の書き方

  遺言書の種類

  遺言能力

  遺言で指定できること

  遺言による延命治療拒否(尊厳死宣言公正証書)

  遺言が無効になる場合

  遺言書の書き方

  遺言の取消

  円満な相続のために
聴講者の皆さんのケアプランの作成や相談業務に多少でも役立てば本望です。

中学校での消費者教育の講演


 平成24年6月16日には、PTAの立場から蛭川中学校で消費者教育の講演を行いました。

翌月の7月13日には、消費生活相談員の業務として岩邑中学校で講演を行いました。

 

どちらも講演のテーマは「考えてみよう!ケータイ・ゲーム・お金」でした。

 

中学生に対する消費者教育のテーマとしては、環境や食育などもありますが、契約問題についての教育を専門としているので、その分野での話を中心としました。

 

中学生が契約を身近に感じる場面は少ないので、学問的な契約論を展開するわけにはいきません。(間違いなく居眠りの温床になってしまいますね。)

 

そこで、恐らく中学生の大部分が関心の高い分野であるインターネット・コンテンツやスマートフォンを切り口に、時間とお金の使い方や契約の話題について話をしました。

 

講演の概略は次のような構成にしました。

 

(1)市内の消費者被害の実態

(2)ネットに使う時間とお金

(3)ネット依存症と事件

(4)ネットショッピングと契約

(5)ワンクリック詐欺

(6)まとめ

 

データ提示の仕方とか法律に関する部分には、もう少し表現を噛み砕かないといけないという反省点はありつつも、総体的には我が身の行動を振り返りながら、自分の問題として聴いてもらえたと思います。

 

居眠り層と熱心に聴き入る層が半々という感じでした。

中学生を聴講対象とした場合に、居眠り層を低減していくことが課題ですね。

(高校生以上と中学生では、やはり理解力や集中力の差があることを実感しました。)

 

両校からは全生徒の感想文を頂いたので、いくつかご紹介します。

(感想文は、もちろん全部読ませて頂きました。)

親世代としては、考えさせられることも多かったです。是非、ご一読下さい。

 

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<感想文から抜粋>

 

Aさん

私も長時間パソコンを使ったり親の携帯を使ったりします。時間を忘れて、ついついずっと使ってしまい、気がつくとこんな時間ということがよくあります。

長時間使うと目も悪くなるし、学力が低下してしまうということを学びました。なので使うときは時間を考えて、やり込まないようにしたいと思いました。

(中略)

特にワンクリック詐欺は勝手に請求が来て、もし自分がワンクリックしてしまったら嫌だし、巻き込まれてしまう可能性もあるので、気をつけて生活したいです。

夏休みにはパソコン・携帯を使うけど、十分に気をつけて考えて使用したいと改めて思いました。

 

Bさん

遠山さんの話の中にネット中毒についての話がありました。ネット中毒にならないようにするためには、時間を守ることが大切だと聞いたので、決まりはしっかり守ろうと思いました。

他にも僕はオンラインゲームをしています。

オンラインゲームはいろいろな事件が起こるので、これからもお金の使い方や、インターネット内での言葉づかい、インターネット内で知り合った人たちとは実際に会ったりしないなどを心がけていきたいです。

 

Cさん

遠山さんには調べても出てこないような資料をたくさん見せてもらって、とても役立ちました。

例えば無料ゲームの会社はどうやってお金をもらっているかということです。

まさかインターネットの周りの広告でお金をとっているとは全く知りませんでした。

また、ゲームのガチャがかなりお金がかかることもわかりました。少しだけなら使って強くなりたいという気持ちが、自分にとって悪いことになるんだなあと感じました。

 

Dさん

私は毎日iPodで多い日は4時間以上もインターネットやオンラインゲームをしています。

○○○○○などで友達を作ってチャットを楽しんだり、ブログを更新したり、アプリで遊ぶのがほぼ私の日常になっています。

インターネットやオンラインゲームを始めると、どうしても止まらなくなって何時間も続けてしまいます。

でも、今回の教室でワンクリック詐欺など、ときどき恐いことになってしまうから注意して使用しようと思いました。

私はピグでもう1万円くらい課金しています。ピグがかわいい服を着ているととてもいい気分になります。

でも、ピグがいくらいい服を着ていても、私や現実の世界に存在するわけではないから、ほぼ無意味なのに、今まで私はそれに気づかずに課金を繰り返してきたから、どんなに自分がダメだったのかとてもよくわかりました。

これからは時間やお金を大事にしたいです。

 

————-

 

どれも中学生らしい素直な感想だと思います。

(大学生くらいになると、斜に構えた感想が混じります。)

 

有意義な中学生活、高校生活を送るためにも、時間とお金の使い方について賢くなって頂きたいですね。

引き続き、情報モラルや消費者契約の問題について考えるお手伝いをしていきたいと思います。

 

講演や研修のご要望がありましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

消費者安全法の改正(消費者事故の調査機関設置と財産被害の行政措置)

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平成24年の第180回国会では、消費者教育推進法の制定の他にも、特定商取引法の改正と消費者安全法の改正など、いずれも消費者問題に対応する法案が可決されました。

 

消費者教育推進法の制定特定商取引法の改正(訪問購入規制の追加)については、リンク先のページにて解説をしています。

 

今回の消費者安全法の改正については、「消費者事故等の調査機関の設置」と「消費者の財産被害に係る隙間事案への行政措置の導入」が新設されました。

 

消費者事故等の調査機関の設置

 

2000年代には、ガス瞬間湯沸し器事故やエレベーター事故など、消費者の生命や身体にとって高い危険性を有する事故が相次いだという背景があり、消費者事故等についての独立した調査機関が必要であると考えられてきました。

 

そこで、内閣総理大臣が任命する消費者安全調査委員会を設置し、生命身体分野の消費者事故等(運輸安全委員会の調査対象事故は除く)については事故原因の調査を行う権限を付与しました。

これにより消費者安全調査委員会には、事故調査のために立ち入り検査や物件保全、現場立ち入りの禁止などの権限を行使することが認められました。

また、他の行政機関による調査結果に対して同委員会が評価や意見をすることも認められています。

 

事故の発生や拡大防止のために、同委員会は内閣総理大臣に対する勧告・意見具申を行う

こともできます。

また、同委員会は関係行政機関の長に対する意見具申を行うこともできます。

 

 

消費者の財産被害に係る隙間事案への行政措置の導入

 

特定商取引法などの規制法の適用除外を狙った、金採掘権などの実態の無い権利販売やイラクディナールなどの外国通貨取引を行う悪質業者による消費者被害が相次いだため、法規制の隙間事案に対する措置が求められていました。

 

そこで、消費者の財産上の利益を侵害する不当な取引であって、重要事項の不実告知などが行われることにより、多数の消費者の財産に被害が生じる状態を、多数消費者財産被害事態として、該当事業者に対して行政措置を認めるものとしました。

 

内閣総理大臣は、被害を生じさせている取引を取りやめさせる勧告を行うことができるものとし、勧告に従わない事業者には命令をすることを認めました。(命令違反には罰則。)

 

また、内閣総理大臣は被害の発生・拡大の防止に役立つ情報を関係機関に提供するものとしました。

 

特定商取引法などの規制法の適用除外を狙った隙間分野での消費者被害は多く、こうした法規制の及ばない分野に行政が介入できるようにしたことは一定の成果があがることでしょう。

 

しかし、被害金の原状回復が図られなければ、消費者被害の救済はできません。悪質業者が詐取金を隠匿する状況を許さないようにすることが、悪質な事業を根絶することにつながるものと思います。

そのためには、法制度や警察の捜査体制などの多様な問題がありますが、取り組むべき課題かと思います。

アフィリエイターが行った不当表示は、景品表示法上の責任が広告主に及ぶか?

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個人(個人事業者も含む)が運営するWEBサイトに、ASP(アフィリエイト・サービス・ブロバイダ)が提供する広告を表示し、そのクリック実績等に応じて報酬を支払うアフィリエイト・プログラムは広く普及をしています。

 

このアフィリエイト報酬を増やすために、広告主(スポンサー)が意図しない誇大広告を行うアフィリエイターがいると、その誇大広告を信じた消費者には誤認による契約リスクが生じ、広告主には消費者に不信感を持たれてしまうという損失が生じます。

 

消費者庁が開催するインターネット消費者取引連絡会(第6回)の議事要旨では、アフィリエイト関連団体より、「報酬の高い広告主の体験談偽造」や「根拠も無く他のものと比較する手法」による誇大広告が目立つことが報告されています。

 

体験談の偽造ということでは、本年1月に騒がれた「食べログ」のヤラセ記事も同種の問題と言えるでしょう。

 

前記議事要旨では、アフィリエイターが行う誇大広告(不当表示)について、景品表示法上の責任が広告主にも及ぶかという質問が出ており、消費者庁表示対策課が回答をしています。

 

その回答によれば、「広告主が、アフィリエイターが行う広告表示の決定に関与したといえるか否かによる」とのことで、個別具体的に案件を判断するそうです。

 

同時に以下の判例も示されています。

「景品表示法上の表示に責任を負う事業者(表示主体)は、表示内容の決定に関与した事業者と解されており、そこには、自ら若しくは他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した事業者のみならず、他の事業者にその決定を委ねた事業者(自己が表示内容を決定することができるにもかかわらず他の事業者に表示内容の決定を任せた事業者)も含まれる。」(東京高判平成20・5・23 平成19年 行ケ 第5号)

 

つまり、広告主が監視を怠り、アフィリエイターが誇大広告を繰り返す状態を放置していれば、広告主にも責任を問われかねないリスクはあるという解釈もできそうです。

 

誇大広告があると認識をしたら、即時に改めるという対策が求められそうです。

ウィルス駆除の自作自演でセキュリティソフトを売り込む手口

投稿者: tohyama | Category: 消費者問題 | コメントをどうぞ

パソコンのセキュリティ対策を装ったWEBサイトや訪問セールスの悪質な手口が確認されています。

 

悪質なWEBサイトの例では、ユーチューブなどを閲覧中に誘導されたURLをクリックしたら、アダルト・コンテンツ等の架空請求の画面が表示されるワンクリック詐欺のトラブルが有名です。

 

これと同じような手口で、誘導先のサイトにウィルスを仕組み、閲覧者がそのサイトにアクセスした直後にパソコンにエラー警告の画面を表示し、その修復のためにセキュリティソフトを買わせようとする詐欺的なサイトのトラブルが増えていることが国民生活センターより公表されています。

 

国民生活センター

エラー表示などでパソコンソフトを購入させる手口に注意-そのエラー表示は本物?

 

上記の国民生活センター記事で公表された相談事例を以下に引用します。

 

——-

【事例1】「阻害要因を除去するためのソフト」を購入したが、インストールできない

 パソコンを立ち上げる度に、「画面に阻害要因がありそれを除去するソフトを買うように」と画面表示され、面倒臭くなって購入した。クレジットカードで決済してインストールしようとしたができなかった。すぐに解約しようとしたが、日本語対応の電話番号記載がない。インターネット上の書き込みを見ると悪質サイトだとも記載されている。クレジットカード会社に苦情を伝えたら、クレジットカードを破棄処分するように言われ手続きした。今後は引き落としされないが、払った2,700円はどうにかならないか。日本での相談窓口の案内がないこの業者は悪質ではないか。

(以上、引用終わり)

——-

 

こうした相談事例は急増しているようで、サイトにウィルスを仕組んで、その修復のためにセキュリティソフトを売りつける自作自演の手口の可能性もあります。

 

しかも、セキュリティソフトを販売するサイトは、海外のドメインや国外事業者であることも多いようです。

 

これは国内法の適用を回避することを狙った悪質な手口ともいえます。

法の適用に関する通則法第11条では、消費者契約については国内法を適用するという特例を設けていますが、サイト事業者と連絡をとろうとしても日本語が通じず、結果として諦めざるをえないという状況もあります。

 

海外事業者との消費者トラブルについては、消費者庁越境消費者センター(CCJ)の相談窓口も設立されていますが、海外の消費者相談機関や消費者団体を通じた交渉になるので、問題を起こした事業者に対する直接的な強制力があるわけではありません。

 

まずは、このような詐欺的な手口にだまされないように、悪質サイトの事例と対策について知っておく必要があります。

 

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)では、セキュリティ対策ソフトの押し売り行為に注意!!という注意喚起を行っています。

 

上記のリンク先では、この手口で表示される警告画面のイメージ図も確認できます。

こうしたウィルスによる警告画面を消すための修復手順(システム復元)も解説されています。

 

また、悪質な手口は訪問セールスでも確認されています。

当職が契約解除についての相談を受けた事例の中では、小規模事業者を狙い撃ちにしたセキュリティ対策のシステム販売事業者がありました。

 

その手口としては、あまりコンピュターやネットワークに詳しくない事業者の事務所を訪問し、システムの無料診断をすると語ってパソコン端末を調査します。

すると次から次にウィルスに感染していたことが発覚し、利用者は驚いてしまうわけです。

 

動揺した利用者に対して、訪問事業者はファイアウォールやウィルス対策サーバーなどのシステムをリース契約で売り込みをかけます。

 

あらかじめウィルスを仕込んだURLにインターネット経由でアクセスすれば、セキュリティの緩いパソコンでは簡単に感染をしてしまうので、販売業者が自作自演をする可能性もあるわけです。

 

事業者間のリース契約は、契約が成立すると解除をするのは困難です。

販売事業者の債務不履行や不法行為の証明ができれば解約の検討もできますが、その事実証明は容易ではありません。

 

以上のように、悪質業者は海外サイトや事業者間契約などの法規制の及ばない領域や規制の隙間を狙った手口を次々と考案しています。

 

法令も改正を重ねることで、様々な悪質商法を封じ込めてきましたが、それでも新たな抜け道を見出す悪質業者が出現しています。

 

悪質商法への規制強化も重要ですが、こうした手口を役立たないものにさせる消費者教育も大事になります。

消費者教育は、消費者と事業者の両者に対して行う必要があり、啓発を通して不審な勧誘や詐欺的な契約を枯死に追い込んでいきたいものです。

 

特定商取引法の改正-訪問購入の規制を新設

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第180回国会において、平成24年8月10日に特定商取引法の改正案が可決されました。

この改正により、「訪問購入」が新たな規制対象として指定されました。

 

改正前の特定商取引法の規制対象は、「訪問販売」「通信販売」「電話勧誘販売」「連鎖販売取引」「特定継続的役務提供」「「業務提供誘引販売」の6つの取引と「ネガティブ・オプション(送りつけ商法)」でした。

 

これに「訪問購入」の取引が追加されたので、特定商取引法の規制対象取引は7種となります。

 

訪問購入という取引形態への規制は、2010年以降に急増した貴金属の訪問買取(出張買取)によるトラブルに対応するものであり、従来までの特定商取引法では規制できなかった問題を改善するものです。
(この問題の詳細は、訪問買取トラブルについてをご参照下さい。)

 

従来までは、訪問買取業者に不当な価格で貴金属等を買い取りされても、クーリングオフはできず、業者が買取した貴金属等を第三者に再販売してしまったら、もう原状回復をすることは困難でした。

そこで、訪問買取(訪問購入)にもクーリングオフを認めるなど、消費者保護を図る規定が新設されました。

 

訪問購入の規制など

 

購入業者に対する不当な行為の規制

・事業者名および勧誘目的の明示義務。

・勧誘を希望しない者への勧誘禁止(不招請勧誘の禁止)

・勧誘を受ける意思の確認義務

・再勧誘の禁止

・勧誘等で不実告知や事実不告知の禁止

・威迫による勧誘など困惑させる行為の禁止

 

書面の交付義務

・物品の種類、購入価格、クーリングオフ、物品の引渡しの拒絶ができることなど、書面に記載して交付することを義務化。

 

クーリングオフ

・8日間のクーリングオフ期間。

・訪問購入の取引では、原則として全ての物品がクーリングオフ対象となる。

・クーリングオフ期間中は、物品の引渡しを拒絶して売主の手元に置くことが可能。

・クーリングオフ期間中に業者が第三者に物品を再販売してしまった場合には、その第三者に対して物品の所有権の主張が可能。(第三者に対する物品の所有権の対抗)

ただし、物品の引渡しを受けた第三者が事情を知らなかった場合(善意無過失)は所有権の対抗はできない。

 

通知義務・告知義務

・クーリングオフ期間中に第三者に物品を引き渡した場合には、売主に対して第三者への引渡しの情報を通知することを義務化。

・クーリングオフ期間中に第三者に物品を引き渡す際には、物品がクーリングオフされる可能性があることを通知することを義務化。

・売主に対して、クーリングオフ期間中は物品の引渡しの拒絶をする権利があることを告知する義務。

 

違反業者への措置

・業務停止命令などの行政処分。

・悪質な違法行為には、懲役や罰金の対象。

 

特定商取引法の全体概要については、特定商取引法の概要のページをご参照下さい。

なお、今回の特定商取引法に対応した出張買取(訪問購入)の契約書雛形をリンク先にて販売しております。

 

 

アフィリエイトや口コミ・サイトの紹介記事が表示違反になるケース

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インターネットで商用のホームページ(通販サイト)を運営する場合には、景品表示法の広告・表示の規制を守らなくてはなりません。

 

通販サイトの表示規制については、景品表示法以外の法律にも気を配らないといけませんが、もっとも基本的な規制は景品表示法であり、消費者庁も「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」という文書でガイドラインを示しています。
(そのガイドラインについては、当サイトの通販サイトの表示規制のページをご参照下さい。)

 

このガイドラインを確認すると、通販サイトでやってはいけない表示の例が示されていますが、その中にはアフィリエイト・サイトと口コミ・サイト(食べログなど)の例も含まれています。

 

インターネットの通販サイトの数は膨大な数に上るため、表示についての監視はされていないという意識がサイト運営者にあるかもしれませんが、平成23年度の東京都の生活文化局消費生活部取引指導課による不当表示に対する改善指導件数は582件にも達しています。

 

また、YAHOOリスティングやGoogleアドワーズなどの広告出稿の基準も厳格化される方向にあり、今後は不当表示を行うサイトは検索エンジンからも締め出される可能性もあります。

 

意図的な不当表示は問題外ですが、サイト運営者が不当表示とは認識していない表現が実は不当表示にあたるというケースも多く、表示の適正化については対策が必要です。

不当表示にあたるかどうかは、前述の消費者庁のガイドラインによって判断されます。

 

アフィリエイト・サイトと口コミ・サイトは、第三者のサイトで広告を行うものであり、広告主自身のサイトで広告がされているものではありませんが、消費者庁のガイドラインではこれらのサイトでも不当表示は禁止であると明示しています。

 

アフィリエイト・サイトについては、「広告主もしくはASPにおいては、実際と比較して商品やサービスが著しく優良もしくは有利であると消費者に誤認させる表示をしてはいけない」とされています。
(アフィリエイターがアフィリエイトサイトに記載する表示については、アフィリエイター自身は自ら商品やサービスを供給する者ではないため景品表示法の対象となりません。)

 

口コミ・サイトについては、「事業者が口コミサイトに対し、自身もしくは第三者に依頼して商品やサービスについて投稿する際には、実際と比較して商品やサービスについて著しく優良もしくは有利であると消費者に誤認させる表示をしてはいけない」とされており、いわゆる自作自演の不当表示を禁止しています。

 

このようにアフィリエイトや口コミ・サイトでの広告も、その表現が不当表示にあたれば行政指導の対象になります。

 

消費者庁や都道府県などの監督官庁に行政指導を受けるようなことがあれば、事業者の信用は失墜してしまいます。

そのようなリスクを回避するためには、表示についてのガイドラインを理解し、適正な広告表現をするように努めなくてはなりません。

 

特定商取引法の隙間事案と海外サイトとの消費者契約トラブル

投稿者: tohyama | Category: 法律と契約 | コメントをどうぞ

消費者の契約トラブルは、法規制が及ばない隙間で新しい問題が発生しています。

 

例えば、特定商取引法では訪問販売の商品や役務の売買契約は、原則として全てクーリングオフ対象にしていますが、権利売買に関しては指定された権利のみにクーリングオフを認めています。

そのため、温室ガス排出権や温泉付き特養の入居権など、実態の不明な新しい権利売買を行う業者が出現し、クーリングオフを回避するトラブルが生じています。

 

その他にも、貴金属を安く買い叩く訪問買取についても、特定商取引法が「訪問による買取」を規制対象にしていないため、これもクーリングオフによる解決はできません。

(この訪問買取については、特定商取引法の規制対象に加えるための改正議論が進められています。)

 

このように現実に生じる消費者トラブルが先行し、それを是正するための法改正が後追いで行われることが続いています。

あまりに規制強化をし過ぎると経済的停滞を招いてしまうので、対策が後追いになるのは仕方がない部分があります。

問題が発生してから、その対策のための規制や法改正が実現するまでの期間を短縮することが大事と言えるでしょう。
(実際に消費者問題に関しての法改正のスピードは上がっています。)

 

インターネット通販サイトについては、比較的新しい商取引の形態といえますが、クーリングオフは認められていないものの、法改正によって消費者の返品する権利が付け加えられるなどの対策が講じられています。

 

インターネット通販は地域性を越えた取引のため、取引相手の拡大(選択の自由の拡大)というメリットはありつつも、その相手の信頼性の確証を得にくいというデメリットがあります。

つまり、インターネット通販業者との間でトラブルが発生したときには、距離的に遠隔地であることが多いため、交渉に要する消費者の負担が大きくなってしまうということです。

 

それでも、その業者が国内の事業者であれば、国内法で解決を図ることが可能であり、消費生活センターなどの相談機関を活用することもできます。

 

しかし、インターネットはグローバルなツールですから、取引相手の業者が海外であることも珍しくはありません。

消費者は日本語で表記されたサイトであれば、日本人が運営している国内のサイトと誤認することも多く、そこから意思疎通が難しくなることもあります。

 

こうした海外サイトとの取引で個人輸入を行う消費者も増えており、そうした取引で問題が生じると言葉が通じなかったり、法解釈の認識が異なったりして、解決が困難になってしまいます。

 

こうした海外サイトとの消費契約トラブルの対策のために、2011年11月に消費者庁は越境消費者センター(CCJ)を設立しました。

 

このCCJは立ち上がったばかりで相談体制が確立できないため、相談受付はメールとFAXのみという限定的な対応にもかかわらず、4ヶ月間で581件の相談が寄せられています。

 

事業者と消費者間の消費者契約については、法の適用に関する通則法の第11条(消費者契約の特例)により、海外事業者との取引であっても日本国内の消費者法の適用が優先されると定められています。

 

しかし、海外事業者との交渉では言葉が通じなければ意思疎通ができず、日本国内の消費者法の適用を主張しても相手側国で強制する実効的な手立てはありません。

 

CCJは海外の消費者団体との交渉の取次ぎはしますが、海外事業者がその交渉を拒めば強制は出来ないという問題があります。

 

今後も消費者の海外取引は増加していくことが予想されますが、紛争処理のシステムが未整備である現状では、トラブルも増加していくもの思われます。

 

そんな海外取引を行う際には、消費者にも自己防衛の姿勢が求められます。

CCJでは、下記の5つの注意事項を公表しているので、これを参考にして頂きたいと思います。

 

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1.運営者の確認

運営会社の規模やサイトの運営期間など安心できる取引相手かを確認してください。不安な場合は運営会社にメール等で直接確認していただくことをお勧めします。

またサイトに表記されている言語を読めない方は利用をお勧めしません。

2.商品についての確認

日本や一般に流通している価格よりも大幅に安く売っている場合など、偽物やコピー商品かどうかなど、慎重にご判断下さい。

本物の写真や仕様(製造国や材質などスペック)と異なる点ないかなど確認する他、直接運営会社や販売主に確認いただくとより安心です。

3.支払方法の確認

海外サイトではクレジットカードの支払いが非常に多いのですが、カード情報の取り扱いに関して安全かどうかの確認いただくことをお勧めします。

特にカード番号を含む情報を運営会社自体が保持しているかなど、万が一カード番号が漏えいした際のリスクをあらかじめ確認してください。

4.配送方法と配送までにかかる期間

どんな配送方法(船便、航空便)なのか、期間はどれくらいなのか、関税がどの程度かかるのかなど、あらかじめ知っておくことで無用なトラブルを回避することができます。

5.キャンセル・返品条件の確認

海外サイトでは、返品やキャンセルに関する規定がわかりやすく書かれていない場合があります。

返品ができるかどうか不安な場合は、あらかじめメール等で確認することをお勧めします。

 

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グローバルな取引もインターネットの魅力ですが、海外サイトとの取引にはリスクが大きいことも認識して、CCJが注意喚起する上記の点を確認した上でサイトを利用するようにしたいものです。