ネット営業の遠山行政書士事務所

岐阜県中津川市蛭川2244-2

日本の消費者問題の歴史

契約トラブルを無くして顧客満足度の向上を

 

日本国内における主な消費者問題の変遷を年代別にまとめてみました。
大きな社会問題となった事件が、消費者運動や行政・立法によって解決し、事後の問題を予防するという流れになっています。

今後も新たな問題が生じていくものと思いますが、消費者団体や行政が中心になって啓発・予防に努めることが大事になるでしょう。

 

第二次世界大戦前後の消費者問題

第二次大戦前にも、1918年(大正7年)の米騒動のように消費者問題や消費者運動は存在していましたが、情報伝達の仕組みや消費者保護の法令などが未整備であったので、日本国全体での大規模な取り組みは見られませんでした。

第二次大戦後は、消費者は極端な物資不足と経済的困窮に悩まされ、大阪主婦の会の「牛肉不買運動」(1948年)や主婦連合会の「不良マッチ退治主婦大会」などの消費者運動が起こり、これが行政を動かして販売価格の安定や商品品質の向上のための規制が行われるようになりました。

 

1950年代の消費者問題

1957年には、主婦連合会が「人口甘味料が入っているにもかかわらず全糖と表示されている」として、粉末ジュースの表示をめぐり不良ジュース追放運動を起こしました。
同時にこの表示をめぐり裁判にも発展し、最高裁では公正競争規約の表示に対して消費者には不服申し立ての権利がないと敗訴判決を受けました。しかし、裁判中に公正取引委員会が業者に対して無果汁と表示をするように告示をしたので、実質的にはジュースの表示について適正化が図られました。

森永ヒ素ミルク事件(1955年)では、粉ミルクにヒ素が混入したために12,000人以上の乳幼児がヒ素中毒にかかりました。
製造物責任法が施行される以前であり、過失責任主義であたっため一審では森永に無罪判決が出されましたが、1973年になって有罪判決となりました。

また、整腸剤のキノホルムの副作用によるスモン病事件(1955年)でも、11,000人以上のスモン患者が認定されました。

 

1960年代の消費者問題

1960年には、ニセ牛缶事件と呼ばれる商品の表示にかかわる問題が起きました。
これは缶詰の内容を牛肉と表示しながら、実際は馬肉や鯨肉が入っており牛肉はほとんど入っていなかったことから、大きな社会問題になりました。
これが契機となり表示の適正化が求められ、1962年には景品表示法が制定されました。

また、サリドマイド事件(1962年)やカネミ油症事件(1968年)などの大量生産品による健康被害の増大も深刻化しました。

こうした消費者問題が多発するようになり、兵庫県が1965年に生活科学センターを設立し、これがモデルとなって全国に行政の支援による消費生活センターが設立されるようになりました。

 

1970年代の消費者問題

合成甘味料のチクロの不買運動(1970年)や食品添加物のAF2の追放運動(1974年)が起こり、食品の安全にかかわる問題について関心が高まった結果、これらの使用が禁止されるようになりました。

また、カラーテレビの定価と実売価格の違いが明らかになり、その二重価格が問題となって不買運動(1970年)が起こりました。消費者団体や公正取引委員会がメーカーに改善を要望し、メーカーは2割前後の安価な新製品を発売することで事態は収束しました。

1970年初頭から百科事典の強引な訪問販売が問題(ブリタニカ事件)となり、無店舗販売によるトラブルが急増しました。
1971年にはねずみ講の「天下一家の会」が社会問題となり、無限連鎖講防止法(1978年)が制定されました。ホリディ・マジック社やAPOジャパン社などによるマルチ商法も問題となり、多数の在庫を抱えて不利益を被る消費者が続出しました。
こうした無店舗販売によるトラブルを防止するために、1972年に割賦販売法が改正され、販売条件の明示やクーリングオフ制度が導入されました。その後も、1976年には訪問販売法(2000年に特定商取引法に改称)が制定され、マルチ商法や訪問販売への規制と解約のための民事ルールが整備されました。

1970年代には、販売形態や契約に関するトラブルが増加し、それに対する法規制も強化されるようになりました。1970年には国民生活センターが設立され、消費者行政が本格的に立ち上がりました。

 

1980年代の消費者問題

1980年代は規制緩和による食品等の安全性が問題となりました。
当時の厚生省は食品添加物について国際基準より厳しい基準の規制をしていましたが、これを国際基準と同程度まで緩和しました。その結果、1988年には輸入オレンジ等の残留農薬(ポストハーベスト農薬)が発生しました。

1986年にはチェルノブイリ原子力発電所事故が起こり、北欧の放射能汚染食品の輸入が禁止されました。
また、1988年には病死牛が食肉として市場で流通したことが発覚し問題となりました。
このように食品の安全性と表示の問題が顕在化しました。

消費者契約を巡る問題でも、羽毛布団の訪問販売、消費者金融(サラ金地獄)、マルチ商法などの消費者被害が多発しました。
特に被害額が2000億円ともいわれる豊田商事事件(1985年)では、金を預託する証書を発行したが実際にはほとんど運用がされることがなく、預託商法の問題がクローズアップされた。
この対策として、1986年には預託法による現物まがい商法の規制がされました。

サラ金問題については、1983年に貸金業規制法が制定され、貸金業者の登録制度が実施されて適正化が図られました。
また、出資法も改正され、刑罰の上限が109.5%から73%、更に40.04%と段階的に引き下げがされました。
しかし、利息制限法の上限である15%(違反に刑罰なし)と出資法の上限金利(刑罰あり)の間に差が生じ、これがグレーゾーン金利と呼ばれる問題を残し、2000年代のクレジットカードによる多重債務問題の温床となりました。このグレーゾーン金利の撤廃は2010年の出資法改正まで待つことになりました。

 

1990年代の消費者問題

1990年代はバブル経済の崩壊とその後の規制緩和によって、経済環境が激変した時期でした。
食品関係の問題では、1994年の国産米不足、1991年の牛肉・オレンジの輸入自由化に続き1996年には米も自由化されました。
1990年にはアメリカ産レモンからポストハーベスト農薬(2,4-D)が検出され、1997年にはジャガイモ・大豆などの遺伝子組み換え食品が問題となり、食品の安全性が問われるようになりました。

表示については、1995年に加工食品の日付表示が従来の製造年月日表示から、消費期限や賞味期限の表示に変更されました。

契約面では、不況に経済悪化につけこんだマルチ商法や内職商法が流行し、エステティックサロンや外国語会話教室などの継続的サービスによるトラブルも急増しました。
こうした契約トラブルに対応するため、1996年には訪問販売法(現・特定商取引法)に電話勧誘販売と連鎖販売取引(マルチ商法)の規制が加えられました。
1999年には、訪問販売法に内職商法と一部の継続的サービス(特定継続的役務)の規制が加えられ、これらの分野には規制が強化されました。

産業の高度化、大量生産によって生じる消費者の拡大損害への対策として、1994年には製造物責任法(PL法)が施行されました。
これにより従来までの民法上の過失責任主義が修正され、製造物によって事故が生じた際には、製造業者に過失がなくても製造物に欠陥があって消費者に拡大損害が発生すれば、被害を受けた消費者は損害賠償を請求することが可能となりました。

 

2000年代の消費者問題

2000年代は食品の安全に関する問題が多発しました。
2000年には雪印乳業の黄色ブドウ球菌混入事件や、2001年の国内での狂牛病(BSE)の発生があり騒然としました。2003年にはアメリカでBSEが発見され、アメリカ産牛肉の輸入が禁止となりました。
こうした問題への対策として、2000年に改正JAS法、2004年に牛肉トレーサビリティ法が施行され、2006年には残留農薬規制ポジティブリスト制が導入されました。

しかし、2007年には内部告発による食品偽装の発覚が連続しました。
不二家の期限切れ牛乳の使用、ミーとホープのひき肉の混ぜ物による偽装表示、石屋製菓の賞味期限改ざん、赤福の消費期限改ざん、比内地鶏のブランド偽装、船場吉兆の産地・原材料の偽装など、大手企業による品質保持期限や原材料の偽装表示が多発し、消費者の食品の表示に対する不信感が高まりました。

また、不況とクレジットの普及によって、多重債務問題が深刻化し自殺者も増加するようになって、貸金業への規制が進みました。
貸金業法と出資法の改正により、2010年には長く続いたグレーゾーン金利が撤廃され、利息制限法の基準金利に引き下げがされました。
これにより消費者金融に対するいわゆる過払い金返還請求が相次ぎ、貸金業者の経営状況が悪化し破産する事業者も現れました。

2001年には訪問販売法が特定商取引法に改称され、特定継続的役務にパソコン教室と結婚相手紹介サービスが追加され、規制対象となりました。
2005年には認知症の高齢者に対する住宅リフォームなどの次々販売が発覚し、2009年の特定商取引法改正では次々販売に対する過量販売解除権が加えられました。

2009年には、消費者庁設置関連三法(安全法・設置法・整備法)が施行され、これにより消費者庁が設立し、消費者関連法の所管と製品事故などの情報集約、消費者被害の防止に取り組むようになりました。

 

2010年代の消費者問題

2011年3月11日の東日本大震災により福島第一原子力発電所の事故が起き、セシウムなどの放射性物質が大量に流失しました。
そのため日本の食品に対する安全性が国際的に注視されるようになり、事故の収束と放射性物質の検査体制が求められています。

インターネット取引やクレジットカード・電子マネーの決済が増加し、無店舗事業者や海外決済代行業者など遠隔取引によるトラブルが増加しています。
また、少子高齢化の進行により高齢者の契約トラブルも増えています。
こうした問題に対応するため消費者契約法・特定商取引法・割賦販売法などの見直しや改正が行われます。

消費者の権利意識の高まりと共に、消費者による過剰請求の問題も起きています。
企業・行政・消費者の共同により消費者のライフステージに合わせた消費者教育を充実させ、消費者の合理的選択能力を高め、消費者市民社会を実現していく取り組みが求められます。

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