ネット営業の遠山行政書士事務所

岐阜県中津川市蛭川2244-2

適法にサイト運営するための薬機法・景表法・著作権法対策

契約トラブルを無くして顧客満足度の向上を

2016年の年末にDeNAが運営する医療情報に関するキュレーションサイトがネット上で炎上した事件は、その後DeNA運営の全10サイトの非公開、リクルートやサイバーエージェントが運営するサイトも記事の多くを削除という事態に発展しました。

 

この事件では、これらのサイトで(1)医薬品医療機器法(薬機法)、(2)景品表示法(景表法)、(3)著作権法に抵触する問題があったと指摘されています。

 

東証一部上場の大企業であるDeNAがこうした法務のコンプライアンスを度外視して、多量の(価値の無い)記事を量産してグーグルをSEOハックし一時は圧倒的なPVを集めて広告収益を上げたものの、その代償に大バッシングを浴び、東京都(行政)からも調査を受け、サイトを自主閉鎖する事態に追い込まれたわけです。

 

この問題は“キュレーションサイト”や“まとめサイト”を運営してアフィリエイト・ビジネスをする人だけではなく、通販サイト・SNSサイト・口コミサイトなどを運営する多くのインターネットビジネスに関わる人が理解して対策をする必要があります。

そこでインターネットビジネスに関わる皆さんがこの事件の教訓から学んで、コンプライアンスの問題で転ばないための知識を整理します。

 

目次
DeNA炎上事件の経緯
事件について整理
(1)キュレーションという建前で実態は自社手配の記事掲載
(2)取引の優位性を背景に安価でライターに記事を書かせたこと
(3)低品質な記事を量産し検索エンジンの検索結果に悪影響を与えた
(4)医薬品医療機器法
(5)景品表示法
(6)著作権法
記事量産のSEOハックがグーグルを激怒させる?
コンプライアンス遵守がビジネス寿命を延ばす

 

それでは目次の順序に従ってこの事件の解説とサイト運営者が採るべき対策について述べていきます。

 

DeNA炎上事件の経緯

DeNAはウェルク(Welq)という医療健康情報に関するキュレーションサイトを運営していました。その他にもファッションなど様々な分野で10個のキュレーションサイトを公開していました。

キュレーションとは、インターネット上の情報を収集しまとめることとされ、建前としては一般の投稿者がウェルクに記事を書いてDeNAはその情報公開の場を提供するというものでした。
ちなみにDeNAはこうしたキュレーションサイトを立ち上げるにあたり50億円を投資して先行サイトを買収した模様です。

DeNAのキュレーションサイトでは、2,000文字程度の原稿を一日に数百ページも公開しており、この多頻度多量投稿という仕組みがグーグルの検索仕様に適合して、このキュレーションサイトの記事が様々なキーワードで検索上位を席巻するようになりました。

キュレーションサイトにはアフィリエイト広告や他企業のタイアップ広告を表示して、その広告収入で稼ぐというビジネスモデルでした。

しかし、ウェルクは人の生命・健康に関わる医療情報について、医学的根拠の無いデマを多数掲載することになり、それが検索エンジンの医療キーワードの上位を占める事態になってネット上で批判が噴出するようになりました。
2016年12月には東京都福祉保健局がDeNAに調査を行って、DeNAは自ら運営する全10個のキュレーションサイトを非公開としました。

 

また、DeNAは多量の記事投稿を継続するために一文字0.5円という安い単価で外部ライターに記事執筆を発注していたことも批判されました。
安価かつ短納期で記事を調達するために、ウェブ上の他者の記事や画像をコピーして改変するためのマニュアルを用意していたことも指摘され、著作権法に違反する行為を推奨していた疑義もありました。

つまり一般投稿者が書いた記事を掲載するというキュレーションの本来の性質とは程遠い運営実態であったことが明らかにされました。

 

このように資金と人手を投入して短期的にPV数を稼いでも、それが道義的におかしいものであったり法令に抵触する疑義があるとネット上で指摘されて炎上し、そのビジネスは短命で終わってしまうことが実証されました。
インターネットビジネスに関わる人は、これがDeNAの単なる自爆と考えるのではなく、サイト運営をしていく上でのリスクとして正しく理解をする必要があるのではないでしょうか。

 

事件について整理

この事件は複数の問題を含んでおり、健全なサイト運営を継続するための教訓を得るためには絡み合った問題を整理する必要があります。

まず道義的問題と法的問題に分けて考察すると次のようになります。

 

<道義的問題>
(1)キュレーションという建前で実態は自社手配の記事掲載
(2)取引の優位性を背景に安価でライターに記事を書かせたこと
(3)低品質な記事を量産し検索エンジンの検索結果に悪影響を与えた

<法的問題>
(4)医薬品医療機器法
(5)景品表示法
(6)著作権法

 

この6つに分類した問題点について以下に述べます。

 

(1)キュレーションという建前で実態は自社手配の記事掲載
キュレーションとはインターネット上の情報をまとめて掲載するもので、一般投稿者がキュレーションサイトに投稿することを前提としたシステムです。
しかし、実際にはサイト運営者のDeNAが外部ライターに対して発注した記事を掲載しており、一般投稿者の投稿割合はかなり少なかったと語られています。
そうした実態を見る限りではキュレーションサイトという名称が虚偽であり、「DeNAが運営する情報サイト(責任監修DeNA)」と表示するべきでした。

しかも、サイトには「第三者の投稿なので記事の内容は保証しない」という趣旨の但し書きが随所に表示されていて、実態はサイト運営者が手配した記事なのに盛大な責任逃れを図るという欺瞞性に溢れていました。

 

(2)取引の優位性を背景に安価でライターに記事を書かせたこと
2,000文字以上の原稿を一日に数百も手配するのには人手も費用もかかります。特に専門性の高い記事を手配するにはライターに支払う報酬もかさむものです。
そこでDeNAは安価に大量の記事を調達するためにランサーズなどのクラウドソーシングを活用しました。

クラウドソーシングとは、ネットを介した仕事の募集と応募のシステムですが、仕事の引き受け手は個人事業者が中心です。本来であれば高品質な記事を書けるライターを選別して発注をするべきですが、記事の量と納期を優先した結果、記事の質は度外視する運用がされていたようです。
更に記事の単価も一文字あたり0.5円の水準に抑えていたようで、このような仕事を受けるライターも責任をもった執筆はできなかったようです。

これは発注者とクラウドソーシング運営者が仕事の質を高める努力を怠り、単に安く早く記事を書くことのみを追求した結果といえるでしょう。
このようなつながりでは良い記事を書くという土壌はできるものではなく、無責任な記事が氾濫した要因になりました。

 

(3)低品質な記事を量産し検索エンジンの検索結果に悪影響を与えた
2016年時点ではグーグルの検索仕様は「多量の記事が多頻度に更新されるサイトが高く評価される」ことになっており、キュレーションサイトの仕組みはその仕様に適合していました。
DeNAはグーグルの検索仕様を熟知した上で、ウェルクなどの記事量産の仕組みを構築しSEO(検索エンジン最適化)を実施したわけです。
その結果、医療やファッションなどの分野の重要キーワードでは、DeNAのキュレーションサイトが検索結果の上位を席巻することになりました。

その上位表示された記事の内容が良いものであれば何の問題も無いところですが、前述のような経緯で量産された低品質な記事ですから、デマ情報が検索エンジンの上位に踊ることになりました。
DeNAの南場会長自身が謝罪会見において「ネット(に出ている医療情報)は役に立たなかった」と語りましたが、それを後押しするようなSEO操作を自社で行っていたことになります。
これには検索エンジンの品質を保とうとするグーグルも迷惑を被り、その検索結果を信用した一般ユーザーも不利益を被ったことになります。

 

(4)医薬品医療機器法(薬機法)
医薬品医療機器法第66条では「何人も、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」と規定しています。
この広告規制は販売事業者だけに限定されるものでは無く「何人」にも規制が及ぶ厳しいものです。

キュレーションサイトはアフィリエイト広告の掲載をしていても直接に物販をしているわけではないのですが、薬機法の広告規制は「全ての人(法人)」が対象となるため、医療に関するデマ情報を掲載した場合には同法の罰則対象になりえます。

 

また、薬機法では、次の3つの要件を満たす場合は広告にあたるとされています。

 

・顧客を誘引する意図が明確である
・特定の商品名が明らかにされている。
・広く一般に認知できる状態である

 

サイトに掲載したアフィリエイト広告が上記の要件を満たした上で医薬効果を標榜する場合には、そのアフィリエイト広告を配信した事業者(ASPや広告主)は薬機法の広告規制を受けることになります。

医薬品の認可を得ていない食品については、医薬効果の標榜を記載することは厳禁となります。

 

(5)景品表示法
景品表示法第5条では、販売事業者が次のような不当表示をすることを禁止しています。

 

(a)優良誤認表示
製品の品質等の内容が実際よりも著しく優良であると表示すること。
(例)「過剰なダイエット効果の宣伝」「産地偽装の食品」など

 

(b)有利誤認表示
製品の価格等の取引条件が実際よりも著しく有利に表示すること。
(例)「携帯電話がO円」「上げ底包装」「定価と売価の二重価格」など

 

(c)特定分野の表示
・無果汁の清涼飲料水についての表示
・商品の原産国に関する不当な表示
・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
・不動産のおとり広告に関する表示
・おとり広告に関する表示
・有料老人ホームに関する不当な表示

 

キュレーションサイトで表示に関する審査を行わずに掲載された記事には、上記のような不当表示を含むものがあった可能性もあります。
特に食品分野での不当表示が懸念されるため消費者庁は「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」というガイドラインを公表しています。

景品表示法において規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者であり、広告媒体を発行する事業者(新聞社、出版社、広告代理店、放送局、ショッピングモール等)は、原則として、規制の対象となりません。
キュレーションサイトにおいても直接の物販はしていないため、景品表示法の適用については解釈の難しいところはあります。

しかし、「食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をする者」であれば健康増進法の規制の対象となり、食品の製造業者、販売業者等に何ら限定されるものではありません。したがって、食品に関する表示については、例えば、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者のみならず、これら広告媒体事業者に対して広告の仲介・取次ぎをする広告代理店、サービスプロバイダーも健康増進法の規制の対象となり、キュレーションサイトも消費者庁のガイドラインに準拠した掲載が求められます。

 

(6)著作権法
キュレーションサイトについては他者が著作権を有する記事や画像を無断転載しているという指摘が後を絶ちません。
しかし、キュレーションサイト側は「引用はしているが無断転載はしていない」という主張をしてきました。

著作権法では無断転載は違法行為とされますが引用については合法としています。
そこで同法が認める引用の要件を把握しておく必要があります。

 

著作権法(32条1項)では引用のルールを次のように定めています

 

・既に公表されている著作物であること
・公正な慣行に合致すること
・報道・批評・研究などのための正当な範囲内であること
・引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること
・カギ括弧などにより引用部分が明確になっていること
・引用を行う必然性があること

 

更に引用を行う場合には、その出典情報などの出所の表示義務もあります。(著作権法48条)

 

この引用の要件の中で「引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確であること」が怪しい記事が多いことが問題になります。
つまり、引用部分は必要最小限度に留めて、それ以外のオリジナルの記事(コンテンツ)の分量が多くなければいけないということです。
オリジナルコンテンツが主であり、引用部分はあくまで従の関係であることが明白である必要があります。

 

逆説的に言うと、上記の引用要件を満たせば引用は合法になるわけですから、サイトに掲載する記事について審査・編集をしっかりと行えば著作権の問題は十分に予防が可能です。
著作権トラブルを引き起こすサイトは、そうした基本も守れていないわけで、そのような姿勢では今後のインターネットビジネスを継続するのは難しいという話になります。
これが契機となって大手サイトの審査は厳しくなっていくと思われますが、小規模サイトにおいても意識的に取り組んで行かなくてはいけない課題です。

 

記事量産のSEOハックがグーグルを激怒させる?

“キュレーションサイト”や“まとめサイト”が多量の記事を多頻度で更新し、ソーシャルメディア等から有料で外部リンクを誘引する施策を行って、それがSEO効果を発揮してグーグルのキーワード検索の上位を占めるという現象がDeNA炎上の出発点になりました。
上位表示されたのが有益かつ正確な情報であったなら、ネット炎上をすることは無くキュレーションサイトの評価も高まっていたことでしょう。

しかし、現実にはキュレーションサイトに掲載されていたのはゴミやデマなどのノイズが混じった怪しい記事だったのです。
しかも他者の記事や画像をパクリ続けていたので、正当な権利者からの苦情も相次ぎました。

ネットでは「検索結果には悪質な広告が混じる」「ネット検索の情報は信用できない」という言説も見られるようになり、自由と公正なネットの正義というものが陰に隠れてしまうようになった気もします。

 

この状況を最も苦々しく思っているのは、やはりグーグルではないでしょうか。

 

グーグルの会社情報には「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです」と唱っています。
その使命を実現するために検索仕様の改善を続け、検索者が有益な情報を見つけ出せるように努力をしていることは間違いがありません。

グーグルはスパム情報が上位表示されることを避けるため、有料でのリンク購入を排除したりコンテンツ量の少ないサイトを低く評価するなどの施策を行ってきました。
そうした改善を踏みにじるように資金と人手を投入してSEOハックを行い、低質なコンテンツで検索上位を溢れさせて、人々の検索への信用を失墜させた“キュレーションサイト”や“まとめサイト”のシステムを見過ごすほど甘い会社では無いはずです。

 

グーグルは、いずれキュレーションサイト対策の仕様変更を講じることでしょう。そうなった時に巻き添えを食わないよう、本項で指摘したキュレーションサイトの問題点を排除したサイト制作を実施しなくてはいけません。

 

コンプライアンス遵守がビジネス寿命を延ばす

インターネットの技術進化は激しく、それに対応するネットリテラシーや法規制の内容も時間の経過とともに変化しています。
そうした性質があるため、インターネットビジネスの手法は長期継続するものが少なく、圧倒的に短期間で寿命を迎えるノウハウの方が多くなっています。

そうだからといって、短期間で売り抜けるためにウソや誇大広告が許されるわけではありません。
一部上場企業であってもルール違反をすれば手痛いペナルティを受けることは証明されました。

ただ、それでもインターネット上には不当表示や法的にグレーな表現が溢れているのも現実です。
多くのサイトがグレー状態を放置しているから、自分のサイトもグレーであることを自覚しながら放っておいても大丈夫だろうと思うのは危険です。
グレーな部分は修正しなければ、抜き打ちの行政指導やグーグル検索からの排除というペナルティを受けるリスクは常につきまとうものです。

 

問題は景品表示法などの法令もガイドライン変更があったときに、その情報について把握していなかった場合です。
知らぬ間に法令違反のレッテルが貼られて行政指導を受けたり、ショッピングモールや検索エンジンから自社サイトが除外されたら、インターネットビジネスの計画は狂ってしまいます。

そのような事態に追い込まれないためにも、検索エンジンや法規制の動向には気をつけておくべきです。
あなたがインターネットビジネスに関わる方であれば、SEOやネット広告についての情報収集と電子商取引関連の法令改正情報はチェックし続けなくてはなりません。

まとめ

本記事を簡潔にまとめると次のとおりです。

・“キュレーションサイト”や“まとめサイト”の炎上は安易なライターへの外注の道義的責任と表示違反や著作権侵害などの法的責任がある。

・SEOハックによってデマ情報が検索上位になったことが確認され、検索エンジンの信用も失墜した。これに対してグーグルが放置するわけがない。

・医薬品として認可された商品・サービスではないものは、どのような形式であっても医薬効果を標榜してはならない。

・販売事業者は優良誤認と有利誤認の不当表示を行ってはならない。特に食品については直接に物販をしない情報掲載サイトでも不当表示をすれば罰則対象になる。

・著作権法の引用ルールを守らないパクリは無断転載として罰則対象になる。

・検索の上位表示ルールや法令は時の流れとともに変更されるものなので最新情報をチェックしていく必要がある。

 

検索エンジンやネット広告の仕様変更や法令の改正に関する情報を個別に収集するのはたいへんなことです。
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