ネット営業の遠山行政書士事務所

岐阜県中津川市蛭川2244-2

電子商取引に関する論点

契約トラブルを無くして顧客満足度の向上を

経済産業省が発行する 「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の 「電子商取引に関する論点」 についての要約を以下に掲載します。

オンライン契約の申込みと承諾

【論点】
電子契約が成立する時点とは、具体的にいつか?

通常の遠隔地間の取引では、契約者の一方が契約を承諾する通知を発したときに成立する発信主義(民法526条)を採っています。これはインターネットが登場するよりも遥か昔に決められた原則なので、承諾して返事の手紙を書いてから相手に郵送されるまで数日を要することを想定しており、近年の電子商取引には実情に合わないところがあります。
そこで、電子消費者契約法ではインターネット通販サイト(電子商取引)での電子契約については、民法の発信主義を修正して契約者の一方が承諾の通知を発し、それが相手方に到達したときに成立する到達主義(電子消費者契約法4条)を採用しました。これはインターネットの普及に伴って、電子メール等の送受信は瞬時に行えるようになったため、承諾通知も即時に到達する実情に合わせたものです。承諾通知のメールが相手方の受信サーバー(POPサーバー)に着信した時点で電子契約が成立します。

商用サイトにおいては、通常は注文者がサイト上で注文操作をした瞬間に、ほぼ同時期に注文内容(申込み)が販売事業者(サイト運営者)に送信されます。
販売事業者が注文内容を確認して、折り返しに注文の承諾のメールを送信し、その承諾通知のメールが注文者に到達したときに電子契約が成立します。販売事業者が自動応答メールで注文の承諾の趣旨のメールを送信した場合は、そのメールが注文者に到達したときに電子契約が成立します。

 

オンライン契約の内容

【論点】
インターネットでの通販サイトや各種会員サイトなどでは事業者が定めた利用規約を置くのが一般的だが、消費者に対してどのように規約の内容を提示し、同意を得る手続をすれば、この利用規約が有効と扱われるようになるのか?

商用のウェブサイトを運営する際には、取引条件や契約成立時期の確認などを定めた利用規約を作成し、その規約に基づいて取引を行うことが一般的になっています。特に同じ顧客に対して繰り返し商品を販売したり、継続的なサービスを提供する事業者では、利用規約への同意を求めて会員を募り、その会員と取引を行う形態が増えています。
そのような商用サイトで用意する利用規約は、単にウェブサイトに表示すればよいものではなく、利用者の同意があって始めて有効となるものです。

そこで、利用規約への同意の手続として有効とするためには、「利用者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるようにウェブサイトに掲載されていること」と「利用者が開示されているサイト利用規約に従い契約を締結することに同意していると認定できること」の2つの要件を満たす必要があります。
具体的には、サービスの申込み時に利用規約の全文を表示し、この利用規約に「同意して申込みする」と書かれたボタンを用意し、これをクリックするという操作を経たときに、利用規約への同意があったものとして扱われます。
(ただし、各種法令に違反する内容を利用規約に記載した場合、消費者が同意手続を行っていたとしても違反内容は無効と扱われます。)

 

なりすまし

【論点】
「なりすまし」が行われた場合、なりすまされた本人が責任を負う場合があるのか?

なりすましによって行われた意思表示には、原則として本人にはその効果が帰属しません。
しかし、a)本人が行ったように見える外形があり、b)相手方が善意無過失であり、C)本人にも一定の責任があるという民法上の要件を満たせば表見代理の規定(民法109条、110条、112条)によって契約が成立し、本人が責任を負うケースもありえます。

例えば、クレジットカード決済におけるなりすましでは、家族や同居人がクレジットカードを使用した場合や他人にクレジットカード番号等の情報を教えた場合等には、本人が支払い義務を負う可能性が高くなります。
(主なクレジット会社の規約では、クレジットカード会員に①善良なる管理者の注意をもってクレジットカードを管理する義務、②クレジットカードの紛失等については速やかに届出する義務等を定めています。これに反する利用があった場合はクレジットカード会社は支払い義務を逃れます。)

 

未成年による意思表示

【論点】
未成年者が契約の申込者となった場合の取消(民法5条)は、インターネット取引ではどのように扱われるか?

未成年が法定代理人(親権者)の同意を得ずに行った契約は、原則として取消が可能であり、インターネット取引の場合でも同様です。
ただし、未成年が「成年であると偽って(詐術を用いて)」契約を行った場合には取消はできません。(民法21条)
この場合にも、インターネット事業者は「未成年者は親権者の同意が必要である」ことを申し込み画面上で明確に警告した上で、申込者に生年月日の入力を求める等の確認措置をとる必要があります。単に「20歳以上」というボタンを選択させるだけでは確認措置をとったことにはならず、未成年の詐術にはあたらないとされています。

また、携帯電話端末を用いた電子契約では、携帯電話の契約者が親権者であっても、未成年者がゲーム等のコンテンツを利用する場合等においては、コンテンツを提供する事業者はサービスの申込み時に成年者であることの確認もしくは親権者の同意の確認を行うことが求められています。
コンテンツ提供事業者がこの確認措置を怠り、利用者が未成年者であった場合は、未成年者が契約取消を主張したときは、その取消は有効とされます。

 

インターネット通販における返品

【論点】
インターネット通販において、消費者が返品を出来るのはどのような場合か?

消費者が通信販売で商品を購入した場合は、商品到着後8日以内であれば、消費者は返品に関わる費用(送料など)を消費者自身が負担することで売買契約の解除をすることが可能とされています。(送料などの返品費用が消費者負担とされており、契約解除の通知の効力発生時期も事業者に通知が到達した時点とされており、これらがクーリングオフによる契約解除とは異なります。契約解除通知が8日以内に事業者に届かなければ契約解除はできません。)

この通信販売の返品ルールは、クーリングオフとは扱いが異なり、法定返品権と呼んで区別しています。
ただし、通信販売事業者が返品の条件を予め明示していた場合は、その条件が優先されます。つまり、サイトに「該当商品については、不良品以外は返品ができません」と見易く表示していれば、返品対応を不可と定めることが可能です。

また、インターネット通信販売の場合は、広告(ホームページ)への返品条件の明瞭な表示の他にも、最終確認画面にも返品条件の表示が義務付けられています。(特定商取引法第15条の2第1項但し書き。特定商取引法施行規則第16条の2)

インターネット通信販売では、返品条件を「ホームページの明瞭な位置」と「最終確認画面」の2箇所に表示しなければ、表示の不備という扱いになり、8日間の契約解除(法定返品権)が適用されることになります。

 

ネットショッピングモール運営者の責任

【論点】
ショッピングモール運営事業者は、モールの店舗と利用者の間で生じた利用者の損害に責任を負うか?

モールに参加した個別店舗と利用者の間の取引で生じた損害については、原則としてショッピングモール運営事業者は責任を負うものでありません。
ただし、以下の3つの要件が全てそろう場合にはショッピングモール運営事業者が責任を負うケースもありえます。

(1)店舗の営業がショッピングモール運営事業者自身による営業と見誤って判断するのも止むを得ない外観が存在(外観の存在)。
(2)その外観が存在することについてショッピングモール運営事業者に責任がある(帰責事由)。
(3)利用者が重大な過失なしに営業主を見誤って判断した(利用者の善意無過失)。

 

インターネット・オークション

【論点】
インターネットオークションの利用者(出品者と落札者)の間で、商品未着や代金未払い等のトラブルが生じた場合、オークション事業者が損害を受けた被害者に対して責任を負うことはあるか?

インターネットオークションは、オークション事業者が個々の取引には関与せず単に取引の場を提供する場合には、原則としてオークション事業者が損害賠償責任を負うものではないとされています。しかし、警察本部長等から競りの中止命令を受けたにも関わらず、オークション事業者が競りを中止しなかったため、落札者が盗品を購入し、盗品の所有者から返還請求を受けた場合などにおいて、オークション事業者は注意義務違反による損害賠償責任を負う可能性があります。

オークション事業者が、出品代行をしたり、特定の売主の特集を組んで積極的に宣伝をしたり、オークション事業者自体が売主となるような場合には、オークション取引の場を提供するだけでなく積極的に販売に関わったものとされ、このようなケースでは、オークション事業者にも一定の損害賠償責任が認められます。

また、インターネットオークション事業者には、手数料が有料・無料であるに関わらず、取引の情報交換のインフラの機能を維持管理する責任を負い、このインフラに不備があった場合等には損害賠償責任を負う可能性が生じます。

 

インターネット上で行われる懸賞企画の取扱い

【論点】
インターネットのホームページ上で行われる消費者に対する懸賞企画は、取引に付随して提供される景品を規制している景品表示法の規制の対象となるか?

景品表示法では、(1)顧客誘引の手段として、(2)取引に付随して提供する(3)経済上の利益を景品類と定め、この規制をしています。(景品表示法第3条)
また、(1)くじその他偶然性を利用して定める方法、または(2)特定の行為の優劣または正誤によって定める方法によって景品類の提供の相手または提供する景品類の科学を定めることを懸賞と定義しています。(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年3月1日公正取引委員会告示第3号))
よって、商品の購入や会員登録を景品提供の条件とする場合には取引の付随性がみちめられ、景品表示法の規制を受けるものと考えられます。
景品表示法では、懸賞により提供する景品類の最高限度額は、懸賞に係る取引の価額の20倍の金額(当該金額が10万円を超える場合には10万円)を超えてはならず、かつ、懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞係る取引の予定額の100分の2を超えてはならないこととされています。(同告示)

商品の購入や会員登録を景品提供の条件としないホームページ上の懸賞については、いわゆるオープン懸賞とされ、景品表示法の規制対象にはなりません。

 

共同購入クーポンをめぐる法律問題について

【論点】
共同購入クーポンサービスの取引の構造は、法的にはどのような関係性になるか?

共同購入クーポンとは、一定時間内に一定数がそろえば、購入者が大幅な割引率のクーポンを取得できるビジネスモデルです。この共同クーポンの取引形態には以下の3つの類型が存在すると考えられています。
なお、クーポンについては資金決済法の適用除外とするために、クーポンの有効期限を6ヶ月以内に設定しているところが圧倒的多数を占めます。

(1)債権譲渡
共同購入クーポンは、最低販売数を超える申込があることを停止条件として、加盟店舗でサービスを受けられる権利(債権)とされます。クーポンサイト運営事業者と購入者の間には売買契約が成立します。
店舗がサービス提供を怠った場合には、クーポンサイト運営事業者がその債務不履行責任を負うことになります。
(購入者がクーポンを利用しなかった場合のクーポン代は、クーポンサイト運営事業者に留保されます。)

(2)販売インフラ提供(集金代行)
クーポンを購入した時点で、クーポン購入者と加盟店の間で、加盟店によるサービス提供についての契約が成立します。ただし、最低販売数を超える申込があることが停止条件とされるため、その条件が成就しないと契約は成立しません。
クーポンサイト運営事業者は、クーポンの発行についてのインフラを提供し、さらに集金代行サービスを行う形をとるものが多いです。
店舗がサービス提供を怠った場合には、クーポンサイト運営事業者は債務不履行責任を負わないものと考えられています。クーポンサイト運営事業者の責任については、媒介契約の当事者としての責任もしくはクーポンサイト運営事業者と購入者の間の契約内容によって検討することになります。
(購入者がクーポンを利用しなかった場合のクーポン代は、加盟店に留保されます。)

(3)広告および集金代行
販売インフラ提供型と同様で、クーポンを購入した時点で、クーポン購入者と加盟店の間で、加盟店によるサービス提供についての契約が成立します。ただし、最低販売数を超える申込があることが停止条件とされるため、その条件が成就しないと契約は成立しません。
クーポンサイトに掲載するのは広告に過ぎず、クーポンサイト運営事業者は加盟店から広告料を徴収するとともに集金代行サービスを提供します。
クーポンサイト運営事業者が、広告を掲載しているに過ぎず、契約成立に関しての事実行為を一切行わない場合は、加盟店と購入者の間の契約を媒介しているとは評価できないとされています。
ただし、広告掲載や集金代行の手数料があまりに大きな場合には、クーポンサイト運営事業者も一定の責任を負うものと考えられます。
(購入者がクーポンを利用しなかった場合のクーポン代は、加盟店に留保されます。)

クーポン運営事業者の利用規約の免責条項
クーポンサイト運営事業者の利用規約に「加盟店のサービス内容には一切の責任を負わない」という趣旨の免責条項がある場合でも、購入者が消費者の場合は消費者契約法第8条の「消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」に該当し、この利用規約の免除条項は無効とされる可能性が高くなります。

景品表示法の不当表示があった場合
クーポンサイトの表示に優良誤認や有利誤認といった景品表示法の不当表示があった場合には、消費者にサービスを提供するのは加盟店であるのが前提のため、不当表示の責任は加盟店が負うのが原則です。
しかし、クーポンサイト運営事業者が価格決定などクーポン設計にある程度関与する場合は、こうした不当表示が起こらないように配慮する責任は問われる余地はあると考えられます。

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